栗東民報 2014年6月29日号


政治的考え方が反映しやすくなり

「子ども達の教育にゆがみが出る」懸念の声

教育委員会制度に自治体の長の権限を強化

教育委員会制度を見直す地方教育行政法の改定案が、6月13日成立しました。来年4月1日から施行されます。

主な改定内容は、教育委員長と教育長を一本化した新たな責任者(新・教育長)をトップとする。新・教育長は、自治体の長(市長)が議会の同意を得て直接任命・罷免する。市長と教育委員会が協議する総合教育会議を設置する等となっています。

一番のポイントは、戦後、教育の一般行政からの独立を掲げて設置された現行の教育委員会制度に、自治体の長(市長)の権限を強化したことです。政治の考え方が反映されやすい仕組みになり、教育の中立性が保たれなくなるのではないかとの懸念の声が上がっています。

 



現行の教育委員会制度は

教育委員会は自治体の長から独立した執行機関

現行の教育委員会制度は、戦後の改革期に
①教育の地方分権化、
②教育の民衆統制、
③教育行政の一般行政からの独立を原理とする地方教育行政制度
として創設されました。

自治体の長が所掌する一般行政から独立した教育委員会に教育行政をゆだねることで、教育の自主性・自律性を確保しつつ、国民の学習権・教育を受ける権利を適切かつ十分に保障されるようになっています。

教育委員会は、学校管理、教員人事、教育課程、教科書、学校給食等の学校教育に関する事務だけでなく、社会教育や文化財保護なども、所管しています。これらことに自治体の長の指揮監督を受けることはありませんでした。
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新制度では

自治体の長が「大綱」を策定

新制度では、自治体の長が『総合教育会議』を設置し、教育委員会と協議して教育方針となる「大綱」を決定します。「大綱」には、これまでなかった自治体の長の考えを盛り込むことが可能になります。その実施責任は、新・教育長が負うことになります。

教育の中立性を担保しつつ、自治体の長が教育行政の方針の決定や教育長を直接任命・罷免できる権限をもつことで、教育行政における自治体の長の権限はきわめて大きくなります。教育委員会が自治体の長に従属するのではないかとの懸念の声も上がっています。
 

文部科学大臣の権限も強化

今回の教育委員会制度の改定は、大津市のいじめ問題が背景にあります。いじめによる自殺の防止等緊急の必要がある場合には、文部科学大臣が教育委員会に対して指示できることを明確化する内容も盛り込まれています。

地方自治体の事務処理に明白な違法がある場合は、国が自治体に是正要求や是正指示といった方法で働きかけるルールが定められていますが、今回はさらにその範囲を広げるものとなっています。



教育の自主性の尊重と一般行政からの独立性の確保を

教育行政は、学習権保障を目的とする教育の自主性を尊重し、教育の条件整備を行うことです。地域住民の意思を反映させるとともに、政治的介入を禁止し、一般行政からの独立性を確保することが求められます。




6月議会 個人質問で  <大西時子議員>

教育の自主性・中立性が大切

6月議会で、大西議員は教育委員会制度の改定問題について個人質問しました。

政治が介入する懸念にはあたらない

教育の政治的介入について、「市長が迅速かつ的確に教育委員会の会議の開催や審議できる事項を判断できる」とするいっぽうで、「教育委員会はこれまで同様独立した行政委員会であり、職務権限も従来どおりである」として、「政治が教育内容に介入していく道を開くことになるという懸念にはあたらない」と答えました。

地域住民の意向の反映が大切

教育行政への関わり方について、市長は「教育の中立性・継続性・安定性を確保しながら、地域住民の意向の反映等が大切だと認識している。教育委員会と協議し、教育の振興に関する大綱の策定や教育条件の整備等を行う」と答えました。

教育行政の最終決定権は教育長か?市長か?

さらに、教育長は「独立した権限を発揮できなくなるものではなく、よりきめ細かな対応が可能になることも考えられる」との答弁でした。
市長と教育長の答弁から、教育行政の最終的な決定権は、市長か、それとも教育長にあるのか、非常にあいまいだと感じました。







栗東民報 2014年6月29日号
日本共産党栗東市委員会発行

 市委員長 國松清太郎
 市会議員 大西時子
 市会議員 太田浩美